5 今後の改善の方略
 
 今回の調査結果を踏まえ,校長は今後,自校の社会科学習指導計画の作成に向けて,例えば下記の事項について教員に指導することが必要がある。
(1)  社会科の基礎学力を育てる教材を開発すること
   調査では,「日本の国土のようす」や「工業地域と工業生産」など,抽象度の高い内容において通過率が低くなっている。これは,わが国全体の地理的環境を概観するなど,児童が身近に感じにくい内容については定着しにくいという傾向を示している。従って,これらの単元については評価規準を明確にしながら,児童や地域の実態に応じ,身近に学習できるように教材を工夫・開発する必要がある。更に,総合的な学習の時間との関連も図りながら,基礎的・基本的な事項の定着が図れるような活動の工夫も求められる。
 校長は,学校としての社会科年間指導計画や評価規準の作成を指示し,社会科で育てたい学力を確認しあい,それらの確実な定着が図れるよう社会の変化に対応した教材の開発を全教員で進めるよう社会科主任等を通して働きかけていくことかが求められる。
(2)  考える力を育てる学習過程をつくること
   調査では,思考・判断の場面での通過率が低い。例えば,5学年の貿易相手国を問う問題では,円グラフの資料から第1位のアメリカ合衆国を回答する問題では90%を越える通過率であったが,上位の国や地域を尋ねる問題では約26%であった。これは,統計資料の単純な読み取りができている反面,資料を読み取ってその傾向を把握する力が欠けている現れと考えられる。「地域」という用語の理解不足も加わり,極めて低い通過率になったことから,資料を吟味して考えたり,調べたことを基にして考えたりする社会科学習の重要性が改めて明らかになった。
 また,教員への質問紙による調査では,課題解決的な学習を取り入れている授業において,通過率が高くなっていることから,一方的に教員が知識を注入する授業ではなく,児童同士の相互啓発的な学習の設定も大切であることがわかった。
 今次教育課程においては,考える社会科への改善が重要な課題であるが,各学校においては,本調査結果を踏まえてなお一層考える場面を重視した授業の改善を図る必要がある。
(3)  基礎的・基本的な事項を定着させる指導法に留意すること
 

 本調査では,例えば,1931年の満州事変と1937年の日華事変の内容を把握する設問や,五か条の御誓文の関係人物を問う設問などの通過率が低かった。このことは,これらの学習において学習内容を焦点化する教師の押さえ方が十分でなかったために生じた結果であると推察される。
 とかく,児童の主体的な学習を促したり,児童相互の学び合い活動を大切したりするあまり,教員が必要以上に指導を手控えるという傾向が見られるが,こうした指導のあり方が基礎的・基本的な事項の定着率の低下につながったものと考えられる。
 そこで,校長は自校の教員に対して,例えば児童の学び合いの活動においても,達成したいねらいを明確にするとともに,教員の指導場面を明確に位置付け,基礎的・基本的な事項の定着が図れるように指導していく必要がある。更には,学校図書館やコンピュータなどを効果的に活用する学習方法の改善を促していくことも大切である。

 
(4)  基礎学力の定着を図る評価方法を工夫すること
   本調査では,例えば工業原料と工業製品の違いや,緯度・経度など社会科学習で必要な用語の理解が十分でないということが改めて明らかになった。それぞれの学習で扱う用語や内容を明確にし,教材としての有効性を検証することも大切である。
 また,評価規準を作成し,それを吟味することや目標に準拠した評価の方法・内容の検討をしていくことも大切である。なお,指導と評価の一体化を図り,基礎的・基本的な事項の定着を各単元レベルや各時間ごとに吟味していく作業も改めて求められている。
 そこで校長は,評価規準に照らして「努力を要する」と判断される児童に対しては,個に応じたきめの細かい学習指導の展開をするよう教員へ助言していくことが大切となる。特に,社会科においては,他教科に比べてこの点での工夫がやや不足していることもあり,各校では一層の工夫が求められる。
(5)  学習意欲の喚起や発展的な学習の工夫を図ること
   上記のことがらを実施するに当たっては,「学力」を狭義にとらえて,社会科をいわゆる「暗記物」として指導すればいいのだとする考え方が生じる恐れがある。これでは,これまでの社会科の授業改善の成果を水泡に期すことになる。
 そこで,この間実践してきたように基礎的・基本的な事項の定着に留意しながらも,児童の学習意欲を喚起する学習活動の工夫について引き続き重視していきたい。また,社会科学習における「繰り返し学習」や「補充的な学習」,「発展的な学習」については必ずしも十分に実践方法が周知されていない現状もある。
 今後は,本調査結果を踏まえて,各学校におけるこれまでの社会科実践上の課題と上記の各項目とを関連させ,新たな指導計画を作成していく校長の指導性が求められる。
 
 (資料1)
4 次の資料を見て,あとの問題に答えなさい。

(2) 資料AとBにもとづく意見はどれですか。一つ選んで,その番号を□の中に書きなさい。
  1 生産額がもっとも多い工業地帯は,京浜工業地帯である。
  2 中小工場では,大工場で使う部品をつくっている。
  3 日本の工業の中心は,機械工業である。
  4 自動車の輸出が増え,機械の生産額も増えている。
 
(資料2)
5 のぼる君たちは,わが国の自動車工業のようすやくふうを調べています。あとの問題に答えなさい。
(1)  資料を見て話し合っている二人のそれぞれの発言の(ア)と(イ)にあてはまる数字を□の中に書きなさい。

のぼる: 「わが国の平成11年の自動車の生産台数は,昭和45年と比べて,およそ(ア)倍になっているよ。」
ゆ み: 「わが国が輸出している自動車の台数は,アメリカをはじめ上位3か国で,全体のおよそ(イ)%をしめているわね。」
 
 
(資料3)
6 わが国の貿易について,あとの問題に答えなさい。
(1)  次の文の(ア),(イ)にあう言葉は何ですか。野村を見て,あてはまるものを□の中から,それぞれ一つずつ選んで,その番号を□の中に書きなさい。
 

(資料) わが国のおもな「貿易の相手国・地域」

 
(資料4)