第2分科会 第2分散会〈研究課題〉基礎基本の定着を図り、「確かな力」を育てる教育課程の編成と
校長の在り方

研究発表:
相違→創意→総意と進化する教育課程の開発方
新潟県 上越市立高志小学校 長野克水
I 趣   旨  
(1) 意識改革1
 何も話し合いをもたなくても、「よりよい学校にしたい」「よりよい子供にしたい」と、どの教職員も願っている。また、学習指導要領に基づいて指導するということも共通である。ここからスタートすれば、何も話し合いの時間を設定しないでも、研究開発はスタートできる。
 従来からの「共通理解に立つ」という内容にも問題がある。共通理解に立つといいながら、特定の人の意見、声の大きい人の意見がそのまま共通理解とされることが多かった。そのため、実践が進むに従って、だんだん違いがはっきりしてくる。
 指導的立場にある人の意見に従うことになるので、次第にそれぞれの考えが通りにくくなる。そのため、自分で考えなくなり、次第に無気力になる。共通理解に立つことを強く求めると、その意図と異なり、教職員のやりがいや意慾を奪っていたのである。

(2) 意識改革2
 従来は、研究指定や研究開発学校を特別視していた。特別に開発した教育課程が流行らないのは、開発学校と同じように特別な研究体制を組まないと真似できないからである。だから、通常の勤務時間内に開発した教育課程でないと、普及しないと考えたのである。
 学校は、研究開発学校の指定を受けなくても忙しい。その上に、研究開発に取り組ませたら、時間外勤務、休日勤務を常態化し兼ねない。そうなれば、家庭生活を破壊し、教育活動に悪影響を及ぼすことも考えられる。
 教育課程開発に当たっては、単元開発、教材開発、指導計画の作成などに留まることなく、学校経営、学校運営を見直し、従来と異なるやり方に変えていかなければならない。

(3) 意識改革3
 詳しい計画を立て過ぎると、その計画に縛られ、計画の範囲から出ない研究になってしまう。現実に生起する様々な問題と計画の違いに目を瞑ってしまうことも心配

 研究課題を解決するには、校長の意識改革が鍵を握る。校長が変わらないで、どうして学校を変えることができようか。そこで、教育課程の研究開発をするに当たって、次のように私自身の意識を変えた。
 ひとつは、「十分話し合い、共通理解に立って研究しなければならない」という意識から「初めから共通理解に立っている」というように意識を変えた。
 もうひとつは、「指定校は、通常の業務外の仕事であるから、時間がかかるのは当たり前だから、学校に遅くまで残って仕事をしなければならない」という意識から、「勤務時間内で開発した教育課程でないと、流行らないから、通常の勤務時間内で研究開発に当たろう」と変えた。
 さらには、「計画を立てないと、研究が進まない」という意識から、「全体の計画を立てないで、入り口の計画・設計を行う」というように意識を変えた。
 このような3つの意識改革を基に、「喜んで登校し、生き生きと学ぶ子供」という目標を具現する。具現したことをレポートする。レポートは印刷配布し、ワークショップを行う。この繰り返しで、教育課程が相違→創意→総意と進化していく。
 以上のような教育課程開発により、「確かな力」の最も基礎・基本になるのは、言葉の力であることがはっきりしてきた。生活科や総合において活動したことを作文することで、現実の「もの・こと」と言葉の結び付きを深めることが基礎・基本となる。そのような仕事を進める上で、教師の指導意識が過剰になると児童の学ぶ意慾を妨害してしまう。児童の選択や意志決定を重視し、繰り返し試行錯誤する機会を保障することが「確かな力」を身に付ける基礎・基本になる。
 その上で、少人数指導や習熟度別指導に取り組む。ここでも、作文を取り入れた指導や児童の選択や意志決定を重視していく。繰り返し同じような活動をすることも重視する。このような取組によって、児童が自らの意志で学ぼうとする。それが「確かな力」に結び付いていく。

II 研究の概要

1 研究開発についての基本姿勢