第8分科会<研究課題>  自他の文化を理解し、共に生きる子供の育成を目指す国際理解教育と校長の在り方
研究発表
国際理解教育を推進するための校長の指導性
山形県 山形市立蔵王第一小学校  大場 惠子
I 趣   旨
 社会のグローバル化が進んだ今日、全世界が直面している困難な事態について、国境を越え、地球規模で話し合い、解決していくことが必要な時代になってきている。国際化の進展は、人と人との相互理解、相互交流が基本であり、教育の果たす役割は重要になってきていると考える。中教審の答申においても、国際理解教育に対する明確な理念をもって小学校教育における指導の充実を図るように示唆している。校長は、その重要性を再確認し、リーダーシップを発揮して、国際社会に対応できる子どもの育成に努めることが肝要である。
 山形市校長会では、平成11年度から、各学校において特色ある学校づくりの推進に力を入れてきた。この「特色ある学校づくり」の中で、多岐にわたる国際理解教育をより積極的に推進してきた。さらに、活動を充実するため、地域人材活用費の確保、市施設利用の無料化、情報教育推進事業、ALT配置校の増等、教育条件の整備にも力を入れてきた。
II 研究の概要
1 実態把握
(1)  国際理解教育についての取り組み状況平成13年度は「よく取り組んでいる」と「取り組んでいる」を合わせると50%であったが、平成14年度学校教育目標に、具体的な取り組みを予定しているのは100%である。
(2)  国際理解教育の重点項目 校長が重視したい項目は、異文化に興味、関心をもつ教育、人間としてお互いを大切にし合う教育、人との関わり方を大切にする教育、日本の伝統・文化に親しむ教育等である。また、実践を重ねる中で、国際理解教育の根底に人類愛を置くこと、異文化理解と共に自国の文化を振り返り、郷土を大切にする学習を重視すること、自分の意思を伝えたり、人との関係づくりを大切にする教育を重視すること等大切にしている。
(3)  推進する上で重視したい活動項目
 集計の結果多い項目は以下である。<1>総合的な時間の活用<2>ALTの活用、
   
 

<3>教科、道徳の時間の発展、関連<4>パソコン、インターネットの活用、<5>地域の伝統文化の理解、<6>地域の外国人との交<7>PTAとの連携活動、学校・学年行事等があげられた。ALTを活用した学校では、子どもが物怖じせず発表できるようになった、チャレンジ精神を持つ子が育ちつつある、ネイティブな英語を学ぶことで背景に潜む異文化にふれることができた等成果が上がっている。 また、地域の伝統文化の理解では、各学校の特色がみえる実践が多かった。地域と学校文化の融合を図った山寺小学校(俳人、松尾芭蕉が「閑さや…」の名句を詠んだ立石寺が学区)、地域連携から生まれた「楯山探検マップ」を作成した楯山小学校、伝統工芸の鋳物の花瓶作り体験をした第九小学校。他に開校以来地域に伝わる大黒舞を伝承している学校、紅花の里として、紅花の栽培、紅餅作り、紅花染め体験をしている学校等、様々な取り組みがある。

(4)  国際理解教育の効果を高める教材
 外国人や有識者の話、コンピュータ・インターネット等情報発信機器、帰国児童・外国人家庭からの資料、雑誌・図書・絵本、外国人との直接交流、地域人材の発掘、外国の紹介ビデオなど学校で整えていきたい教材があげられた。
2 課題として見えてきたこと
 学校経営の中に国際理解教育を取り込むことの必要性は、多くの校長が認めている。山形市では、すべての中学校にALTが配置され、小学校への配置も大きく道が広がってきている。まさに、国際理解教育の環境が整いつつある。しかし、情報、福祉、環境、人権等多様な教育課程の推進が要求される中で、国際理解教育のみを取り上げ研究できるとは限らない。
 国際理解教育を「特色ある学校づくり」の観点からとらえ直し、各学校の教育活動を整理してみると、これまで意識していなかった多くの教育活動が、国際理解教育の範疇に位置づけられる。