先進的な学校の経営に学んで、国際理解教育を捉え直し、職員の共通理解と意識の高揚、研究体制の整備、指導者の確保等、学校経営の中に国際理解教育をデザインし、実践する校長の指導力が課題である。

3 研究へのアプローチ
(1)  国際理解教育を進める上で、校長がどのように指導したか、実践例をもとに分析する。
(2)  取り組みのシステムと、校長の指導との関わりを抽出する。
(3)  指導のあるべき姿を、校内のシステム作りの観点からまとめる。

4 明らかになったこと
− 校長のビジョンに基づく実践例の紹介−
 実践1 良好な人間関係づくり
− 豊かな関わりを育み合う校長 −
 
(山形市立蔵王第一小学校)

(1)  校長の願い
  本校は、山形市の南部に位置し、新興住宅地として開発された。近年、土地区画整備による宅地造成や郊外型大型店の進出で学校を取り巻く環境が大きく変わりつつある。子どもや保護者を対象に人間関係のつくりかた、保ち方を意図的に教える必要性を提示した。
(2)  重点事項
[1]  人間尊重の国際理解教育を推進していく。
 子ども相互・子どもと教師・教師と保護者の人間関係を良くする。
[2]  異文化理解の日常化を図る。
 外国籍の保護者が増えている。保護者を知ることは地域を知ること、子どもを知ることに結びつく。
[3]  人間関係のつくり方や保ち方を、意図的計画的に取り立て指導する。
 ソーシャルスキルを身につける。
(3)  具体的なアクションプラン
[1]  ソーシャルスキル育成の時間を年間10時間設定する。
子ども相互の関わりを良くする。
生かす場− こまくさ活動・委員会・登校班等 クラブ・吹奏楽部の活動
[2]  学級、学年、児童会の持ち方を工夫する。
 学びを通し、子どもと教師の関わりを良くする。
[3]  子どもを共に育てる日の設定 (保護者と教師の関わりを良くする)
 授業参観の案内・授業の案内を工夫する。
 
  自由参観日の設定(年間5回)
 子育てツーウェイ(月1回・担任外の出番)
[4]  地域と教師の関わりを良くする。
 子どもを理解する日の設定(町内会長・民生委員) 学校を理解してもらう日の設定
[5]  保護者と教師と共に創る活動
 学年の個性を生かす取り組みで関わりを深めていく。2年英語劇「おおきなかぶ」保護者のボランティアで学習発表会の成功
 外国の家庭料理講座 アメリカ・フィリピン保護者を指導者に異文化理解。
 子育てツーウェイから全学級の読み聞かせボランティア誕生
(4)  校長の指導
[1] 教頭 イメージの共有
教育課程3か年計画の立案
[2] 教務 教育課程への位置づけ
子育てツーウェイの具体策の提案
[3] 研究主任 学習の基盤として校内研究に位置づけ
ソーシャルスキル教育の具体例の提案
[4] 担任 具体的活動案の提示
保護者と協力し異文化体験を組む
親子でできるスキルの実施
(5)  成果
 ソーシャルスキル教育を授業参観日に設定し、子どもの見方、子どもの思いを保護者と共に学んだり、学級懇談会のはじめに手軽にできる自己紹介スキルを取り入れ、保護者間の交流もスムーズになりつつある。
 「読み聞かせボランティア」は、毎週火曜日、全学級(18)で実施している。
 授業参観等学校・学年行事に感想を寄せる数が増えた。行事への保護者の参加も多くなってきた。
 
 実践2  異文化理解をすすめる必要性
− 異文化体験を生かす校長 −
 
(山形市立明治小学校)
(1)  校長の願い
 山形市の北部に位置し、3世代同居・2世代同居の家庭が多い。児童は、入学するとそのまま6年間同じ仲間との学校生活になる。そこで、地区を愛する子どもの育成と同時に国際的な視野で21世紀をたくましく生きる子どもを育てるために、異文化理解(ALTや山形市国際交流員等を通して、異文化交流体験)の場の必要性を提示した。
 さらに、教育目標に迫るため、校務分掌を見直し、「国際理解教育プロジェクト会議」を新設した。