第10分科会〈研究課題 自然を大切にする心と実践力を育てる環境教育と校長の在り方〉
研究主題: 地域に学ぶ環境教育と校長の在り方
北海道猿払村立浜鬼志別小学校  安田正志
T 趣   旨

 近代物質文明の求めてきた大量生産・大量消費・大量廃棄は、大きな環境問題として深刻化している。
 地球的規模の環境問題は、地球温暖化、オゾン層の破壊、砂漠化、熱帯林の減少、動植物の生態系の変化等、人類の生存基盤が危機的状況に至っている。そのようなことから環境問題を「地球的規模で考え、足下から行動する」と当管内でも行動を起こしている。例えば、「豊かな環境を未来につなぐ宗谷環境会議」には、60団体が加入し、年数回会議を持ち、「環境にやさしい行動をできることから始めよう」の行動テーマをもち活動している。また、市町村でも子どもエコクラブ・森つくり・リサイクル出前講座等の活動も行われ、児童・生徒への啓発(標語募集、絵画コンクール、植樹…)にも積極的に関わってきている。
 このようなことからも、地域の形成者として環境問題に主体的にかかわり、自然との共存や共生を求める子どもを育てることは極めて重要になってくる。
 学校では、@環境から学ぶ教育A環境について学ぶ教育B環境のために学ぶ教育の視点を重視し、環境教育への意識化を図ってきている。
 しかし、自然環境、社会環境、文化環境、情報環境等と分野も広く、教科のみでは考えられないことから、教科間の関連、地域や家庭との連携など全教育活動に位置付けることが重要である。また、校長の立場で、環境教育に対する意識付けと児童の発達段階に即した教材化や指導法を教職員と共通にし意識改革を図っていくことが大切である。

U 研究の概要

 提言にあたって、北海道各地の優れた実践を広く紹介することはできないが、宗谷管内(1市8町1村)における環境教育について発表をしていくことになった。朔北の地といわれる宗谷管内で地域に学び、育つ児童・教職員の生き生きとした活動を紹介していきたい。
1 地域の実態
 宗谷管内は、日本の最北に位置し、オホーツク海・日本海・宗谷海峡を経てサハリンを臨み、日本海には利尻、礼文の二つの島がある。
 「利尻・礼文・サロベツ国立公園」や「北オホーツク道立自然公園」をはじめ自然に恵まれている。稚内の西海岸からみる四季折々の利尻、礼文は素晴らしい眺めである。
 宗谷の由来は、「岸の海中に岩の多い所」をアイヌ語で「ソ(ショともいう)・ヤ」と呼んでおり、これが「ソーヤ」となったと言われている。また、おいたちは、宗谷郷土年表によると、1853年北海道が蝦夷地として松前藩に属していた頃、恵比須屋某が場所請負人となり漁業がさかんになり拓かれた。
  このように、本管内は、恵まれた自然や漁場から第一次産業基地として活力のある時期もあったが、近年、漁業資源の枯渇や経済水域(200海里)・産業構造の変化から後継者不足や人口の流出が続いている。管内1市8町1村の学校もその影響を受け、統合、廃校、小規模化が進んでいる。
 また、当管内の全学校はへき地指定を受けているが、小規模校ならではの特色ある教育を地域と共に創ってきている。全国各地からの採用される若い教職員も多く、自ら酪農体験や網起し、地域の行事に積極的に関わり生き生きと活動している。そのような中で、児童も環境保全、自然との共生の大切さを受け止め地域と共に活動をしている。
 現在、一次産業はやや衰退しているが、育てる漁業・酪農経営の改善や積極的な観光事業に力を入れてきている。また、管内各地でサハリンとの文化交流や経済交流が行われ、地域活性化に一つの役割を果たしている。
2 宗谷での環境教育
 当管内の学校は、地域と共に歩み、地域に開かれた学校経営が進められ、30年にわたる海浜清掃、クリーン登下校、リサイクル資源の回収、地域一斉クリーン活動、植樹、自然体験学習、地域探検、環境に関する地域行事への参加など、地域に見守られた活動を続けている。
 実践や推進方法については、まだまだ検討をしなければならない課題はあるが、環境教育の重要性、緊急性を理解し進めている。