特別分科会 <研究課題> 豊かな心をはぐくみ、共生の気持ちを耕す心の教育と校長のあり方
研究発表  雲上に営まれた心の教育と校長のあり方
〜学校・家庭・地域の連携を通して〜
奈良県 五條市立阪合部小学校 西 井 千 尋
I 趣   旨  
II 研究の概要

 昨今、少子化・高齢化が進む中、全国的に学校の統廃合が進み、さらに市町村合併が押し進められている現状をみてみる時、「教育の原点」すなわち、地域と学校が強く連携し、地域が子どもを温かく包み込み、そのつながりを大切にしてきたへき地の教育が年々減少しつつある。

 本市唯一のへき地校であった五條市立大深小学校も多分にもれない。昨年度で休校となった当校の歴史や教育の営みを振り返り、教師として今日まで自分を支えてきた「教育の原点はへき地にあり」の信条を学校経営の基本とし、職員に対しても、常に子どもの心をゆさぶる少人数教育を推進しようと共通理解を図った。

 平成14年度より、新指導要領の下、第3の新しい教育改革が発足。加えて完全学校週五日制導入等が実施されて1年余りが経過した。3年間の移行期間はあったものの、私達教職員にとっても、保護者・地域にとっても戸惑いや試行錯誤の1年であった。言うまでもなく、学校、家庭、地域が一つとなり共に学び合い、高め合う密度の濃い、さらに質の高いものでなくてはならない。そのためには、明確なビジョンをもった教育方針や特色ある学校づくりを、保護者は勿論地域に知ってもらい、理解と支援を得ることが必須条件となる。このことはへき地教育においても言うまでもない。

 大深小学校は、標高600mの山あいの中腹に位置する。戸数43戸の唯一の文化の中心地である。

 戦後100名近くいた在籍児童数も、ここ10年は10人前後を推移していたが、4年前より10人を切り、昨年度は4人にまで激減。平成15年4月1日より同地区にある五條市立阪合部小学校と統合するに至った訳である。             
 今回、休校となった五條市立大深小学校の取り組みを通じて全職員が、ゆれ動く子ども達にどう関わっていったか、また校長としてのリーダーシップをいかに発揮できたか、その足跡を『心の教育』に置き換えて報告する次第である。そして、この報告が全国に存在するへき地教育推進の一端となれば幸いである。

1 平成15年度 五條市学校教育の指標 を軸にして
(1)魅力があり、よくわかる授業を通して、基礎・基本の定着を図る教育活動 【基礎・基本の重要性】
 興味・関心を持たせる魅力ある授業を通して個に応じた指導をし、子どもから学び、自ら考え、主体的に行動できる知識と実践力をもち、基礎的基本的な内容を確実に理解させるよう努めよう。

(2)地域に融合した生活体験を通して、たくましく豊かな人間性を育成する教育活動  【学社融合の推進】
 学校開放を推進し、地域社会の教育力を活用しながら
融合を図るとともに、危機管理に配慮する中で、子ども達が心身ともにたくましく、さらにボランティア精神や豊かな人間性が育つように体験的・問題解決的な活動に努めよう。

(3)人権感覚を磨き、道徳性・国際性豊かで命を大切にする心を育てる教育活動   【共生の重要性】
 人権尊重の精神に基づいて、自他の命 を大切にすると共に生活実態に即応し、郷土や自国を知るとともに、コミュニケーション能力を高め、国際性豊かで、さらに道徳性を高め、力強く未来に生きぬく子どもの育成に努めよう。

(4)マルチメディアの特性を生かし、高度情報社会に対応した教育活動 【IT機器の習熟】
 高度情報通信機器・五條教育ネット等の特性を生かして,広範な資料の収集・選択をし、それを活用して、学ぶ楽しさ・成就感を体得させる授業内容の創造に工夫しながら、「総合的な学習の時間」「選択教科」等はじめすべての教育活動にIT機器の活用習熟に努めよう。

(5)自己研鑽を積み、研修・修養で高め、説明責任ができ、地域に開かれた教育活動 【教育は人なり】
 社会の動きや今日的な課題の対応できるよう、研修や実践の成果を共有し合い、教職員としての自覚を持ち、さらに研修の一層の進化と充実を図り、自己を高め、『きらりと光る』魅力ある授業や実践を通して、地域から信頼される教育の創造に努めよう。