E 校長としての関わり
 地域との関わり。それは「心と心の関わり」である。
また、「人と人との繋がり」でもある。常に人に接し、人を愛し、社会の一員として役立つことのできる児童の育成こそ、教師の勉めであることを示唆してきた。
(3) 様々な交流の場を通して  
 【 ・ 設定理由 ・ 校長としての関わり】
児童数数人という極少人数での学校生活や社会生活はいろんな面でリスクが伴う。児童数4名となった昨年度になって、争いも、口論も殆ど目にすることがなくなった。また、大勢の中に入ると自然と引っ込み思案になる。 従って、大切な成長期に必要な子ども同士の交流の場を出来るだけ多く設定し、これから始まる新しい生活や環境に適応できるよう配慮した。 
@  阪合部小学校との学習交流会
 平成15年4月からの阪合部小学校との統合を控え、在校生2名がスムースに溶け込めるよう、学習交流会を何度かもった。その結果、現在、ごく自然な形で本校の児童として楽しい学校生活を送っている。
A 市主催の行事への積極的な参加
  市主催の小中音楽会への参加し賞賛を浴びる
  市主催のジュニアー駅伝に阪小との合同チームの一員として出場し、優勝に大きく貢献できた。
  市小学校水泳記録会に出場
B  隣接するへき地校との体験交流の実施         

(4) ありがとう 大深小学校
    〜 大深小学校を閉じるにあたって 〜             
【主題設定理由】
子ども達にとって、親にとって、教師にとって、まして地域にとって自分達の学校がなくなるということは本当に寂しく、辛いものである。地域の文化の灯が消えてしまうばかりか、地域にとってもますます過疎化・高齢化に拍車をかけることになる。しかし在校生2名となる大深小学校にとって、将来、よりよい子どもの教育を考え、保護者と地域が何度も話し合いを重ね検討した結果、大深小学校を休校とし、阪合部小学校と統合することを決意。128年にわたる大深小学校の歴史に幕をおろすに至った。
この現実に対して、子ども達は最初は動揺したものの、児童自ら『ありがとう 大深小学校』とタイトルをつけ、各学年また全校で、自分達が生まれ育った大深について、感謝の念をもって、いろいろな角度から様々な方法で調べて冊子にし、一生の思い出作りにしようと計画した。
@ 低・中学年合同研究:「大深のいいところ見つけ」
景色がよく、自然にめぐまれた大深の四季をくわしく観察してまとめる。
 【児童のことば】(2年女子1名、4年男子1名)

 わたしたちは学校のまわりのいいところを見つけにいきました。季節が変わるごとに花や景色を写真にとりました。わたしは夏にさくホタルブクロが好き。秋の彼岸花が好き。雪のつもったところがきれい。今まで見たことのない、今年しか見られないようなすごくきれいな雪景色でした。僕は「自然の空気がおいしくて景色が楽しめる」この大深を大切にしたいと思います。
A 高学年の取り組みから 
学校生活、修学旅行、運動会、校舎、遊びや服装などの移り変わりについて昔の写真や聞き取り調査を通して、あらためて、歴史の重みを感じたようである。
【児童のことば】(6年男子2名)
 この校舎には大深に住んでいる人の思い出やおじいちゃんの思い出、おとうさんの思い出、そして僕の思い出がたくさんつまっています。なので、休校になってもこの学校を大切にしたいです。
 ありがとう大深小学校、ありがとう木の香りのする校舎、ありがとう狭いけど村の人達といっしょに楽しんだ運動場、ありがとう僕達を見守ってくれた大いちょうの木。さようなら大深小学校。

III まとめ
・はからずも統合した阪合部小学校に赴任して二ヶ月、この間、前任校であった大深小学校を数回訪ねてみた。学校を閉じる際、再び学校が蘇ることを願って子ども達と校庭をきれいにし、花壇にいろいろな木を植え、子ども4人の手形をレリーフにし、校歌を石碑に刻み込んだ。そこには子ども達のぬくもりがまだまだ感じられた。
・子どもの営みがあってこそ学校である。昨年度全校児童は4名であったが、そこは確かに学校そのものであった。休校式に「ぼくは、この学校で卒業したかったです。」と語った在校生代表のことばが今も耳に残っている。
・最後の終業式で「今は学校がなくなるのは寂しいでしょう。下の学校へ通うのはとても心配で不安でしょう。でも、みなさんはこの学校で他の学校ではできない貴重な経験や体験ができました。大きくなった時、きっと素晴らしい宝物となるでしょう。」と締めくくったことばに子ども達はどう感じただろうか。
・敢えて、今、その答えは求めない。『心の教育』はこの子達が社会人となってからその成果が出るのだから。
児童の描いたカット図