特別分科会〈研究課題〉 「豊かな心」をはぐくみ,共生の気持ちを耕す心の教育と校長の在り方
研究発表 
多様な人々との交流を通し,豊かな心をはぐくむ学校づくり
― 障害のある人や高齢者などとの触れ合いを通して ―
宮城県 仙台市立虹の丘小学校 佐 藤 隆 雄
I 趣   旨  
II 研究の概要

 近年,都市化や少子化,地域社会における人間関係の希薄化等が進む中で,人々の価値観・倫理観が大きく揺らぎ,家庭や地域の教育力も低下し,社会全体のモラルの低下傾向も懸念されている。こうした中で,子供の生活環境や子供自身の生活意識は大きな影響を受け,子供の人格の形成に様々な課題を生じている。例えば,生命の軽視,自己中心的な価値観,規範意識の低下,他人を思いやる心の低下などの傾向である。
 このような子供たちの現状を踏まえると,学校教育では,子供たちが友達や教師と共に学び合う様々な活動を通し,一人一人に豊かな心をはぐくみ,一人一人がかけがえのない人間として大切にされていることを実感させ,自己実現の喜びを味わえるようにしていく必要がある。
  そのためには,特に,障害のある人や高齢者等の,普段子供たちが触れ合う機会が少ない人々との触れ合いをより多く体験させることを通し,多様な人々に対する理解の広がりと深まりを身につけさせなければならない。このことにより,一人一人が自分を見つめ直し,よりよい自己実現が図られると考える。そして,他者理解の深化を図るためには,心身の健康を整え,確かな学力と確たる道徳観を身に付けさせ,知・徳・体のバランスの取れた人間形成を心掛けることが大切である。
 そこで,校長として,豊かな心を持つ児童を育成するために,家庭・地域の教育力の支援を受けながら,学校教育の充実に総力を傾けるためには,どのような学校経営を図ればよいかを考えてみたい。

2 これまでの本市校長会の共同研究
 仙台市小学校長会では,平成13,14年度,「豊かな人間性をはぐくむ創意工夫を生かした学校経営」はいかにあるべきかについて共同研究を行ってきた。
 これまでの調査研究の結果,各学校において豊かな人間性をはぐくむために,校長は,@家庭と地域との連携,A教育課程の編成と実施,B教職員の意識改革など,多方面から様々な工夫をして取り組み,その実現のためにリーダーシップを発揮している姿が浮き彫りになった。
3 校長会研修部特別委員会の共同研究  豊かな人間性をはぐくみ,それらを家庭,学校,その他社会における具体的な生活の中に生かすためにも,日常生活において「豊かな心」をはぐくむ必要がある。そこで,特別委員会では,これまでの本市校長会の共同研究を受けて,多様な人々とのかかわりに関する調査を行った。この調査は,「多様な人々との交流を通し,豊かな心をはぐくむ教育活動」がどのような場面でどのように行われているかを調査すると共に,それらの教育に対する校長の意識を調査したものである。その結果,次のようなことが明らかになった。
(1)  「障害者との交流」「高齢者との交流」「外国人との交流」「異年齢集団との交流」については,各学校で積極的に取り組んでいる。
(2)  交流の内容は,各学校の地域や規模等によって異なり,特色が表れている。
(3)  「多様な人々との交流」は多くの人との関わりの中で視野を広げ,様々な力が育つと考えて教育計画の中に位置付けている。
(4)  今日の社会的背景の中で「多様な人々との交流」が「豊かな心」をはぐくむ上で大切であると多くの校長がその必要性を認めている。
4 「豊かな心」をはぐくむための基本的な考え方
 
これまでの調査結果や具体的な学校経営実践を通し,特別委員会では,「豊かな心」をはぐくむための基本的な考え方を次のように押さえた。
(1) 「豊かな心」について 人間にとって大切なことは,人の喜びや悲しみを共有す
U 研究の概要
1 研究のねらい
(1) 障害のある子供たちとの交流教育や高齢者などとの触れ合いなどを通し,豊かな心をはぐくむた
めの学校づくりはどうあればよいかを探る。
(2) 「豊かな心」をはぐくむための学校経営における校長の役割と指導性の在り方を探る。