第2分科会 〈研究課題〉豊かな人間性をはぐくむ教育課程の編成と校長の役割
研究発表
「生きる力」をはぐくむ教育課程の編成・実施・評価と校長のあり方
−子どもの確かな学びを実現する総合的な学習の時間の確立と校長の役割−
北海道 長万部町立長万部小学校  鈴木祐司
I 趣   旨  
II 研究の概要
 現行の学習指導要領は、子どもたちが豊かな人間性や基礎・基本を身に付け、個性を生かし、「生きる力」である(1)自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力、(2)自ら律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心などの人間性、(3)たくましく生きるための健康や体力などの育成を基本的なねらいにしている。
 教育課程編成に当たっては、子ども一人一人に育成をめざす資質や能力を明確に意図しておくことが大切であり、各学年で重点をおいて押さえたい資質や能力、各教科の特質に応じて育てたい資質や能力、総合的な学習の時間を核にした横断的・総合的に育てたい資質や能力などを、構造的に明確にしておくことが必要となる。
 教育課程に総合的な学習の時間を位置づけることは、総合的な学習の時間だけを考えればよいというものではなく、教育課程全体の枠組みと特色を踏まえ、各教科・領域等との関連と発展を図るようにすることが大切な用件となる。各学校では2年間の移行期の中で総合的な学習の時間の意欲的な試行が重ねられ、昨年度現行学習指導要領の完全実施に伴い、総合的な学習の時間の本格的実施となり、平成15年度は2年目を迎えた。
 北海道小学校長会では、国の教育改革及び教育課程の改善等についての本道の動向と課題を明らかにするために
(1)  全国連合小学校調査研究部より付託された調査事項の集約と検討
(2)  教育改革、現職教育及び教育課程にかかわる北海道小学校長会としての必要な事項の調査
を目的とした調査から、本道の小学校の教育課程の傾向と課題を明らかにした。
 そして、渡島小中学校長会では「豊かな人間性をはぐくむ『総合的な学習の時間』を組み入れた教育課程の編成」に当たって、それぞれの校長がどのような指導性を発揮していくことが必要なのかということについて、実践をもとに研究を進めることにした。

1 道小学校長会教育改革特別委員会調査報告から
(全道各地区4%抽出 59校 H14.7月実施)
(1)平成14年度の総合的な学習の時間の実施状況については、次のとおりである。

1  「いくつかの課題を20時間程度で実施している」が半数を超え、「2・3の課題を取り上げ、それぞれ50時間以上で実施している」が1/3を占め、「年間1つのテーマで実施している」は8%である。ほとんどの学校で、地域や子どもの実態を踏まえ、課題をいくつか設定した多彩な活動が展開されている。
2  活動の中心は、「地域や学校の特色を生かした課題」が 75%を占め、「児童の興味関心を生かした課題」が半数を超える。学習指導要領に例示された「国際理解、情報、環境、福祉・健康等の課題」は、35%である。
 以上の結果から、総合的な学習の時間については、その趣旨が押さえられ、地域の実態や学校の特色を生かした教育活動が展開されていることがうかがえる。また、複数の課題を設定し、それぞれの活動を同程度、あるいは課題により傾斜配当し取り組んでいると思われる。
(2)「総合的な学習の時間」を実践していく上で、どのようなことが課題になっていますか。
1 総合的な学習の時間の評価の在り方 73%
  総合的な学習の時間の具体的指導法  50%
  実施に必要な経費の確保 45%
  外部講師等の人材の確保 42%
  情報の収集・発信にかかわる
施設設備の充実
32%
  実施する上での安全確保 23%
2  以上の結果から、ソフト面での問題がクローズアップされてきている。北海道では「評価の在り方」とその背景となる「指導方法」が半数をはるかに超え、学習評価についての規準や評価方法についての研修・検証が意識されてきたと思われる。また、経費の確保・外部講師等については、昨年度の同アンケート結果と比べ数値が低いことから、教育委員会等の予算措置の改善や費用捻出の努力が行われてきたと考えられる。