平成18年10月25日
各都道府県小学校長会長 殿
全国連合小学校長会長
                         寺 崎 千 秋
 

いじめ等の防止に向けた人権教育の徹底について

 日頃から、児童の健全育成並びに人権教育にご尽力いただいていることと存じます。
 さて、すでにご承知のとおり、小学校女子児童や中学校男子生徒の自殺がいじめによるものとの事件報道等がありました。亡くなられた児童生徒に対し心よりご冥福をお祈りいたしますとともに、ご家族に哀悼の意を表します。
 いじめ等の問題行動の発生は学校・家庭・地域の協力・連携により、平成7年以降努力が功を奏し減少傾向にありました。しかしながら、いじめはなくなったとは言えず、このたびの事件が引き起こされました。このたびのいじめには、教員の心ない一言がいじめを誘発したことが伝えられております。このようなことを二度と引き起こさないために、学校体制を見直すとともに、人間尊重の精神にたった人権教育の徹底が必要であります。
 全連小では、先に「命を大切にする教育の充実」「心の教育を重視した学校経営の推進」「よりよい人間関係の推進」など各学校での徹底を訴えてきましたが、校長は再度いじめ等の防止に向けた人権教育の徹底を図るべく校内体制をチェックするとともに、教員を含めたあらゆる児童・保護者に人間尊重の精神の高揚を図ってくださることをお願いいたします。
 つきましては、下記の事項について、貴都道府県会員への周知・徹底についてご高配を賜りますようお願い申し上げます。
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 全校集会等で、児童に「いじめは絶対に許さない」という指導を徹底する。
 いわゆるいじめには、いじめられる子、いじめる子、傍観している子の存在が確認さ れています。「いじめられる子にも問題がある」という考えをとりがちですが、「いじめる子が悪い」との認識に立って指導することがきわめて重要です。「いじめは絶対に許さない」という毅然とした態度に全教員がたって、再度子供たちの人間関係を見直す必要があります。また、傍観者等を出さないために、モラールの高い学級づくり、学校づくりを推進することが大切です。
 いじめの早期発見・早期解決のために、全校児童一人一人の行動、心の有り様を注意深く観察し、必要な対策を講じる。
 いじめには必ず何らかのサインが出されています。日々生起する児童相互の人間関係のどんな小さな事柄でも細心の注意を払い観察し、指導・助言・援助を行う姿勢が求められます。そのことによって「教員と児童」との信頼関係が生まれるものです。
 いじめの早期発見・早期解決のために努め、組織的な対応を行うことが重要です。
 子供についての情報を共有し,全校で指導に当たる学校経営を推進する。
 子供についての情報が学校に入りやすくし,諸情報を全教職員で共有した学校経営を推進するようにします。そのために,学校ばかりでなく,保護者や地域の人々とも情報を交流し,互いに生かすようにします。また、人間尊重の精神について、学級の指導をはじめ全体での指導を進める中で子供からの適切な情報を得ることが重要です。   
 子供の思いや願いの実現に向けた相談体制づくりを推進する。
 子供たちは日々成長・発達の過程にあります。そこには夢や希望,目標があるとともに、時には葛藤や挫折もあります。そのような子供たちの話し相手や相談相手となるなどの環境づくりに努め,思いや願いの実現,問題の解決に共に当たり,自己実現が図れるように工夫し努力することが重要です。
 家庭・地域社会及び関係機関とのネットワークづくりを推進する。
 学校は,子供たちを保護者,地域の人々,関係機関と「共に育てる」という協力体制を大切にして教育を進めることが必要です。今後,これまで以上に情報交換などに緊密な協力、連携を図り,いじめ等の問題行動を未然に防ぐネットワークづくりに努めることが重要です。多くの人々の目で子供が健全に育てられるよう、地域社会の一層の協力が望まれます。
 学校での言語環境を整える。
 学舎としての学校では美しい日本語を話すことが重要です。子供たちは、相手とうまくいかないと「死ね」「消えろ」「ウザイ」などの言葉を平気で使っています。これらを正していくことが教育作用です。子供たちに近づくということで教員が不適切な表現を使うことがあってはならないと考えます。教材のおもしろさで子供の興味関心を高める努力が必要です。言葉による人権侵害をなくす努力が望まれます。
 学校は子供を取り巻く望ましい環境づくりに努力する。
 子供たちを取り巻く環境は必ずしも望ましいものばかりとは言えません。テレビ、雑誌等のマスメディアで、日々流される情報や娯楽番組の中にはおもしろければよいとし、必ずしも人間尊重の精神にたった内容のものばかりではありません。学校は、保護者、地域の人々と連携し、有害情報の及ぼす影響に鑑み、適切な批判を行ったり、害をより少なくするよう努力したりして、子供を取り巻く望ましい環境づくりを進めることが重要です。