TOP全連小の主張各種審議会への意見青少年の意欲を高め、心と体の相伴った成長を促す方策について
                               (中間まとめ)への意見
 
平成18年11月24日

中央教育審議会スポーツ・青少年分科会
         分科会長 松下 倶子 殿

      
全国連合小学校長会長
                         寺 崎 千 秋
 

青少年の意欲を高め、心と体の相伴った成長を
促す方策について (中間まとめ)への
意見

 

 中央教育審議会スポーツ・青少年分科会が、我が国の次代を担う青少年の意欲を高め、心と体の相伴った成長を促す方策等大人の責任について精力的に調査・審議を進められ、中間まとめとして提言されたことに敬意を表します。今回の中間まとめに対し、全国連合小学校長会としての意見をとりまとめましたので、下記により提出いたします。

 
 

 青少年の自立への意欲に対する大人の責任

 全連小では、「新しい時代を拓き、国際社会を主体的に生きる心豊かな日本人の育成を目指す小学校教育の推進」テーマに、毎年研究大会を行ってきております。その中の愛知大会では、自然と文化を愛し、知恵を身に付け、人としての基を築く子どもの育成を副主題に研究してきました。私たち大人は、日本人とは何か、人間とは何か、自己とは何かを問い続けながら子供と向き合っていく必要があるのではないか。日本の文化や伝統をしっかりと伝えていくことが重要ではないか。社会に役立っていることを実感させていく事が重要ではないか。など議論してきました。この観点からすると大人の責任の項では、日本人としてのアイデンティティを創る方向での論調が弱いように感じます。客観的なデータはあるものの精神的な側面からの言及がもっとあってもよいと思います。
 豊かな社会を創造してきた大人が忘れてきたものは、子供が社会の一員、家庭の大切な労働力といった視点であり、社会的な役割を担わさねばならない状況であったとはいえ、子供にとってはその役割を通して、責任性、協調性、規律性、積極性が発揮される存在であったということです。
 中教審の「幼児期からの心の教育の在り方について」答申「新しい時代を拓く心を育てるために−次世代を育てる心を失う危機−」で提言されてきたように、大人の責任ははっきりしてきていると思います。再度、青少年の自立に向けて見直しを図っていただくことを希望します。

 青少年の意欲をめぐる現状と課題

 青少年の様相を理念的にとらえ分類していますが、分析はうなずけます。その分析の中に見られる事柄の原因になったところは親の養育態度、社会の養育態度にあることがあげられます。特に、基礎的な体力の低下や不足、正しい生活習慣、運動習慣の下での充足感のある生活、青少年の価値観等と社会的期待との相違など、大人では認められないことが青少年では将来性を考え、許してきている事が多すぎたのではないかとも考えます。他人の子をしかることができない社会にしてしまったことに大きな原因があるように思いますし、親の責任を追及しないマスコミ等にも原因があるように思います。
 「情報メディアの青少年への影響については、科学的に明らかとなっている知見はまだ少なく、今後より一層の研究の進展が強く期待される分野である。しかしながら、メディア上の暴力表現が青少年への暴力傾向を促すことや、インターネットへの過度ののめり込みと社会的不適応の間に相関性があることなど、青少年への悪影響がある程度明らかになっている事項もある。」という表記が見られますが、今明らかになっていることを基に何らかの対策をとることが必要です。また、メディアの責任において明らかにしてもらう必要があるのではないでしょうか。
 青少年の意欲の現状を分析することは大人の責任と両刃の刃の関係にあることをもっと明記することが重要です。

 青少年の意欲を高め、心と体の相伴った成長を促すために
  −重視すべき視点と方策−

1  家庭で青少年の自立への意欲の基盤を培おう
2  すべての青少年の生活に体験活動を根づかせ、体験を通じた試行錯誤や切磋琢磨
   を見守り支えよう
3  青少年が社会との関係の中で自己実現を図れるよう、地域の大人が導こう
4  青少年一人ひとりに寄り添い、その成長を支援しよう
5  情報メディアの急速な普及に伴う課題に大人の責任として対応しよう

 5つの提言が示され、「教育関係者だけではなく、家庭・学校・地域そして企業等のすべての大人がこれらを自らの課題として受け止め、積極的に行動することを期待する。」などが述べられています。これら一つ一つがきわめて重要なことであると受け止めることができます。
 現在審議中の「教育基本法案」の第10条に「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。」が示されています。この案文は非常に重要であると思います。これらの実現が可能なような教育振興基本計画を策定し、必要な支援が可能な状況を創っていただきたいと思います。
 最近では虐待等について適切な措置がされるようになってきておりますが、保護者の養育姿勢について必要な情報を適宜出していただくとともに、望ましい状況が生まれるよう支援していただきたいと思います。
 また、保護者が育児に専念できるような体制づくりについて、企業の社会的責任として取り組めるように強く提言いただければと思います。
 現在、いじめ等人間関係を巡る課題が喫緊の課題として突きつけられております。学校ばかりでなく様々な機関において相談体制が整備され、人間尊重の精神にたった課題解決ができるようしていただけたらと考えます。

 

 おわりに、青少年を取り巻く環境は必ずしも望ましいものばかりとは言えません。テレビ、雑誌等のマスメディアで、日々流される情報や娯楽番組の中にはおもしろければよいとし、必ずしも人間尊重の精神にたった内容のものばかりではありません。各マスメディアにはそれぞれチェック機能がありますが、必ずしも娯楽番組のチェックがされているようには思われません。これらをチェックするシステム作りが重要であると思います。学校は、保護者、地域の人々と連携し、有害情報の及ぼす影響に鑑み、適切な批判を行ったり、害をより少なくするよう努力したりして子供を取り巻く望ましい環境づくりを進めることが重要です。これらを支援する体制づくりも合わせ提言いただければと考えます。


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