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平成18年5月17日

中央教育審議会初等中等教育分科会
 教育課程部会特別支援教育専門部会 殿

全国連合小学校長会長
                         寺 崎 千 秋
 
特別支援教育における教育課程の
基準の改善に係る意見について

 本会としては、特別支援教育の推進は小学校の教育においても極めて重要な課題であると認識しています。特に本年4月1日付けで行われた学校教育法施行規則の一部改正により、その大部分が通常の学級に在籍するLD、ADHDの児童が通級による指導の対象とされたこと、自閉症を情緒障害から区分したこと、現在学校教育法の一部改正等について国会において審議されていることなどから、これらの児童の教育を適切に進めるための教育課程の改善を図ることは必須のことと考えております。また、特殊学級や通級による指導における障害のある児童の教育を充実する観点から関係する規定を整備する必要があります。以下に本会の意見を申し述べますので、よろしくご審議をお願いいたします。

 

 LD、ADHD、高機能自閉症等の児童に係る教育課程について
 これらの児童の教育は、基本的には通常の学級における各教科・領域等による教育を障害等に配慮して行うこととなるが、通常の学級における指導と合わせて通級による指導を行う場合には盲・聾・養護学校(「特別支援学校」)の「自立活動」の指導を取り入れることを可能とする必要がある。また、通常の学級における指導においても必要な場合には「自立活動」の内容を参考にして指導することを可能とすべきである。その際、これまでの「自立活動」の区分及び項目の内容・表現をこれらの児童にも適用できるよう改善する必要がある。
    

 特殊学級及び通級による指導の教育課程の基準について
 現行の小学校学習指導要領において障害のある児童の指導については、第1章総則第5「指導計画の作成に当たって配慮すべき事項」に「障害のある児童などについては、児童の実態に応じ、指導内容や指導方法を工夫すること。」、「特殊学級又は通級による指導については、教師間の連携に努め、効果的な指導を行うこと。」と示されているのみであり、特殊学級や通級による指導においてどのような教育課程を編成すべきかについて明確な規定とはなっていない。
 前記総則第5の前段の規定は障害のある児童に対する一般的な留意事項と考えられるが、「実態に応じて指導内容や指導方法を工夫すること」に加え、「学習環境を整える、特殊学級や通級による指導の活用を図るなどして、個別的な教育的ニーズに応えること」などを例示することが望まれる。
 また、特殊学級(「特別支援学級」)の教育課程の基準は、法令上教育課程編成の特例を積み重ねて出来上がっており、児童生徒の実態に応じた柔軟な教育課程編成が可能となっている反面、きわめて分かりにくい。このことが保護者等の理解が得にくい要因の一つともなっているものと考える。特殊学級(「特別支援学級」)の存在は、小・中学校の教育において一人一人の児童生徒の教育的ニーズに対応するための教育の場の一形態であることの意義を踏まえて、その教育課程の基準を明示すべきである。その際、知的障害の児童については、知的障害に対応した各教科の内容を準用できるよう配慮する必要がある。この場合「特別支援学校」の児童生徒の実態も多様化していることも踏まえ、知的障害に対応した各教科の内容についても小学校等の各教科との整合性などについて検討することが望まれる。
 通級による指導については、LD、ADHDが新たに対象となり、「自立活動」の指導と「教科の補充指導」との指導時間数の区分が廃止されたことも踏まえて、学習指導要領上においても一定の基準を明示すべきものと考える。
 また、特殊学級や通級による指導の対象となる児童については、「個別の指導計画」や「個別の教育支援計画」の作成に努めることについてもふれるべきか検討願いたい。その際、専門的な見地からの支援体制が十分整備されているとはいいがたい現状から、作成を義務化することには困難があることにも配慮する必要がある。

 交流及び共同学習について
 障害者基本法の一部改正により「交流及び共同学習」を積極的に進める旨の規定がなされたことから、小学校学習指導要領においてもその位置付けを明確にする必要がある。
 小学校学習指導要領第1章総則第5の(11)の規定に、交流及び共同学習の積極的な推進に努めるべきことを追加するとともに、個々の教育的ニーズに応じた実施に配慮することを示すなど具体的な記述が必要である。
 また、盲・聾・養護学校(「特別支援学校」)と小・中学校との交流及び共同学習を推進するに当たっては、該当児童生徒が生活する居住地域における小・中学校等との交流を推進するなど、両者の児童生徒が共に生活する地域における生活の充実に資する交流に留意したい。

 理解啓発の推進について
 現行の小学校学習指導要領においても、障害のある人々などについて正しい理解を推進する旨の記述がなされているが、道徳や特別活動、総合的な時間の指導、国語、社会などの各教科の指導においても積極的に取り扱うなど、一層理解啓発を推進するための具体的な手立てを工夫する必要がある。
   

 特別支援教育への転換に伴う教育課程編成のための条件作りについて

  @  平成15年3月の「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」には、「障害の程度等に応じ特別の場で指導を行う『特殊教育』から障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な教育支援を行う『特別支援教育』への転換を図る。」ことが示され、障害のある児童生徒について教育を行う際に、教育機関のみならず、福祉、医療、労働等の関係との連携・協力の必要性を説いている。中でも、注目すべきは「個別の教育支援計画」の必要性で、「現在、各都道府県等で進めつつある、教育、福祉、医療、労働等が一体となって乳幼児期から学校卒業後まで障害のある子ども及びその保護者等に対する相談及び支援を行う体制の整備を更に進め、一人一人の障害のある児童生徒の一貫した「個別の教育支援計画」を策定(参考資料を別添)することについて積極的に検討を進めていく必要がある。」とされ、「 「個別の教育支援計画」の策定に当たっては、就学前(小学校又は盲・聾・養護学校の小学部就学前までの段階)、就学中(小・中学校、高等学校又は盲・聾・養護学校に就学している段階)、卒業後(高等学校、盲・聾・養護学校の高等部卒業後の段階)、それぞれの段階において、教育、福祉等の関係機関の中から中心となる機関等を定めて、地域、都道府県、国の各レベルで連携協力体制を構築していくことが必要である。」が求められている。
 これが実現の暁には、「個別指導計画」は個々の児童生徒の障害に応じてできていることになる。今後、教育課程の在り方について審議されるが、この理念をしっかりふまえた教育課程の論議をお願いしたい。個人情報との関係が問題となろうが、望ましい教育の在り方を考えたとき、学校だけで個別支援計画や指導計画を創るのではなく、関係機関が連携して創ったものを受け継ぐシステム作りが重要であると考える。これが真の教育課程である。工夫を願いたい。
  A  今後、特別支援教育を進めるに当たっては、教員の資質が大きなウエイトを占める。通常学級にLD,ADHDの児童等が在籍し、指導の対象となることを考えたとき、教員養成の段階から学校の状況を想定したカリキュラム構成がされ、教員免許状の要件としておく必要がある。学校における教育課程の編成・実施・評価の眼を創っておく必要がある。従って、自立活動等の在り方に関する知識・技能は適切な教育を進める意味で不可欠である。教育課程を考えるのであるが、このような面もふまえた論議をお願いするとともに、実現の方向を示されることを期待したい。
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