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 各県校長会
 全連小の主張

平成19年7月13日

学校評価の推進に関する調査研究協力者会議
   座 長 様

全国連合小学校長会長
                         池 田 芳 和
 
「学校評価の在り方と今後の推進方策について」
今後の議論の素案への意見


 今国会において改正学校教育法が成立し、その中に新たに学校評価と情報提供について規定され、学校評価の実施と公表が法的な責務を負うことになりました。これに先立ち,「新しい時代の義務教育を創造する(答申)」(平成17年10月)で、「学校評価については、地方・学校の主体性と創意工夫で教育の質を高めるとともに、保護者や地域住民に対し説明責任を果たす観点から、自己評価や保護者、地域住民による外部評価を一層推進することが必要である。」と指摘され、学校評価が学校教育の信頼の確立に大きな意味をもつことは全国連合小学校長会としても十分理解しております。また、平成18年3月「学校評価ガイドライン」が示され、その実施方法についても各学校が創意をもって取り組んできたところです。
  このたび学校評価の推進に関する調査研究協力者会議が「学校評価の在り方と今後の推進方策について」の素案を精力的にまとめられたことに敬意を表します。学校評価の目的や方法について現場を預かる職能集団としての全連小の立場から、提言に対する意見をまとめました。下記のとおり論点に沿って、全連小の意見を述べますので、よろしくお取り計らいください。 

 
 

総論 ―学校評価の目指す目的― について

@  学校評価の必要性について
 学校評価の必要性は十分認識している。素案では「学校評価を行う最終的な目的は、それを通じて学校運営の改善と発展を目指すことにより、教育水準の向上と保証を図ることにある」としているが、わかりにくい定義である。
 平成18年度「学校評価ガイドライン」では,学校評価の目的を三点から記述している。
 その一つとして「各学校が、教育活動その他の学校運営について、具体的な目標を設定し、その達成状況を整理して取組の適切さを検証することにより、組織的・継続的に改善すること。」が述べられ、三点目に「各学校の設置者等が、学校評価の結果に応じて、学校に対する支援や条件整備等の必要な措置を講じることにより、一定水準の教育の質を保証し、その向上を図ること。」としており、学校評価の実施主体の目的が明確にされている。
 学校現場では常に育てるべき子供像を明確にして、子供の育ちで教育活動を評価している。改正教育基本法や学校教育法の義務教育の目標は、人格の完成と国家社会の形成者をはぐくむことが学校教育の目標になっていることからすれば、学校がその役割を果たせたかどうかを評価することが第一義的であると考える。従って、素案の定義は評価主体を曖昧にし、分かりにくいものにしている。
 また、「自己評価」をいきなり出して問題を指摘しているが、「自己評価」の問題というより、「学校が行う評価」の問題点とするなら言わんとする意味が分かる。自己評価、外部評価、第三者評価を整理して、記述した方がわかりやすい。
 更に述べるなら、文部科学省は「学校運営」という用語を一貫して使っている。しかし、教育改革国民会議が「学校運営を改善するためには、現行体制のまま校長の権限を強くしても大きな効果は期待できない。学校に組織マネジメントの発想を導入し、校長が独自性とリーダーシップを発揮できるようにする。」と提言していることから考えたとき、学校長の「経営」という視点が重視されねばならない。法に基づいて目標の実現を図るという観点からは、「運営」という概念が妥当性をもつと考えるが、組織マネジメントの発想を導入していくのであれば,法を前提にしながらも、学校長の「経営」方針があって、計画・実施・評価・改善というマネジメントサイクルが想定されることから、学校「経営」という用語の導入が必要ではないかと考える。
   
A  学校評価の意義・目的・手法について
 
学校評価を実施する意義の記述においても、目標と方法の逆転が見られる。学校は法に示された目標を実現する(教育水準の向上と保証を図る)ために、成果を検証し、評価し、学校運営の改善と発展を目指すのであって、運営の改善が先に来るものではない。この点を修正すべきである。
 内容的な面で言うならば、学校の設置者は、教育の質を保つため、成果が上がったところへの支援と成果が上がらなかったところへの支援の内容は違うものであると考える。両面を意識した記述がほしい。
   
各論 ―学校評価の現状と今後の推進方策― について
@


 学校評価の実施状況と課題について
 学校評価の充実に向けた検討の観点について
 自己評価は実施率が高いのに結果公表率は低くなっている。逆に、外部評価や外部アンケート等は実施率と結果公表率が同じである。自己評価結果公表の認知度について触れている。この原因を七つの視点から考え充実に向けた意見を提出していることに意義があると考える。
 教育用語・定義等の問題であるが、教師の専門的な視点と保護者等の体験的な教育の視点、受益者としての視点、保護者としての視点ではわかりにくい面が出るのは当然である。内部評価に期待されることと外部評価に期待されることは当然違っているものであろう。内部評価の公表が遅れている状況は、どのように示して良いのか学校が迷っているからであろう。良い例を示してくれることを期待したい。
 
A














 学校評価の用語の定義について
 学校評価の用語の定義を厳密にすることによってどのようなメリットがあるのか。この点が疑問である。自己評価については目標の実現に向けて、組織活動が、学校運営が如何に効率的に、円滑に、協力的に出来たのかを学校管理運営規則に示された校長の職務を視点に評価することは重要である。しかし、ここで言う「外部評価」では、学校関係者が自己評価結果を検証するとされているが、定義することによって難しい要求を保護者に強いることになる。教育は本来、子供たちが「楽しく学校に通い、集団の中で生きる力をはぐくむ」ことが出来ればよいのではないかと考える。そのような状況が保護者に看取ることが出来れば、まずは成果が上がっていると言えよう。このような観点から外部アンケートを実施していくことが、保護者や地域の学校教育への理解や協力、ひいては信頼を作り出すものと考える。外部評価の定義を厳密にすることで、様々な要求をして複雑にし、教育活動を混乱させるのではないかとの危惧を抱く。

 今後の検討課題について
 児童・生徒による評価については,発達段階に応じた評価を工夫していくべきだと考える。小学生では、学校生活が楽しいか、授業が楽しいか、授業が分かるかなどで評価することが出来る。おとなと同じような内容で教師や学校を評価させることは、望ましいものではない。

 
B








 自己評価の充実と学校関係者評価の着実な導入について
 自己評価は実施率が高いのに結果公表率は低くなっている。逆に、外部評価や外部アンケート等は実施率と結果公表率が同じである。素案では、公表されないのは、最初から公開することを意識していないから進まないとしているが、日本的な風土が影響していると考えられる。日本人は他者評価は受け止めるが、自己評価を積極的にしてこなかったことに起因していると考える。自己評価を披瀝することは美徳としない。このような観点からも流布しない理由を考えてもよいと思う。これを打ち破るには,何を公表するのか事例を示していくことであろう。

 学校関係者評価(外部評価)について、外部アンケートをはずすことは適当でない。理由は先に述べた。コミュニティースクールのような形態を取るのであれば、重要な概念であるが、そうでない体制ならばアンケートは外部評価とすべきである。

 
C



















 評価に基づく支援・改善など関係機関の役割の在り方について
 学校の自己評価や外部評価の関係機関への提出率が出されているが、学校現場からすれば、支援・改善が学校が要求するようにはならないことに起因すると考える。
評価を提出するのは、2月や3月であるとすれば、年度予算で動く行政にとっては対応できないこと、同じく人事についても時期がずれており新年度からは有効に機能しないことになる。校長はPDCAサイクルを意識していても、Aの部分で対応が遅れるのであればなんのために評価したのか分からないという教育システム上の問題が大きくあるのである。これをどうするのか具体的な提案が欲しい。

 学校評価については、各自治体の教育委員会において以前から「学校評価資料」等の名称で手引き書が作成されており、各学校はそれに基づいて評価を行っているのが現状である。従って、共通部分や個別の評価項目があり、特色を生かした学校評価になっている。

 現在、各自治体では教員評価制度が導入され、目標管理、人事管理等についての評価者訓練が進められている。これが定着すれば、学校のマネジメントシステムの確立に向けより精度の高い評価が可能になってくるものと考えられる。これらは特別に研修するのではなく、管理職研修の一環として位置づけられて行われることが望ましい。

 第三者評価については、国のマネジメントシステム、各自治体のマネジメントシステムと連動しなければ、具体的な改善に繋がっていかないと考える。今年度、「全国学力・学習状況調査」が実施されたが、これの結果によって国レベルでの教育課程の基準の改善に生かされると同時に,学校の教育課程の見直しや学習指導の改善に生かされるものと考える。このような仕組みが、教育振興基本計画の中で財政的な裏付けをもって組織化されることを望む。
   
D
 学校の情報の公開の促進
 学校の情報公開の在り方については、学校の努力を認めるとともに、学校評価ガイドラインにおいて明確化を図ったり、情報公開の方法について情報提供を望みたい。
   
E  第三者評価の在り方に関する今後の検討課題について
  学校評価に関しては、目標の実現状況を評価することとそれを実現させるための条件がしっかり整備され、組織として円滑に機能しているかを評価することが重要である。自己評価や第三者評価はこの点を確実に評価できるようにすることが必要になってくる。
 学校は、学校運営改善に向けて予算等の配分を考えたり、校内研修の在り方を考えたりして、その使命の実現に努力する必要があると考える。また、行政は改善のための財源、人事等が一体に組み込まれた評価システムであることが重要である。評価が良くも悪くも学校改善に生かされるよう今後配慮願いたい。
   
F
 学校評価と教員評価との関連について
 保護者の外部評価アンケートにおいては、子供の学習や生活など学校生活に関する評価を通して、教員に対する評価は見えるものである。教育工学的評価ばかりでなく、羅生門的な評価も重要な側面である。バランスをとって行っていくべきものである。
 現在、教員評価にあってはそれぞれの教員の資質や能力を伸ばすことを目指して、自己申告という形態を踏んでいる。このことは、教員の学校運営への参画を常に意識付けしていることになっており,学校の組織的マネジメントへの動機付けになっている。学校評価と教員評価は機能が異なってはいるが、教員の学校の組織的マネジメントの見方を確実に高めている。
   
おわりに
   義務教育答申では、「地方・学校の主体性と創意工夫によって教育の質の向上を図るため、国がナショナル・スタンダードを設定しそれが履行されるための財源保障など諸条件を整備した上で、市区町村が行うべきことは市区町村が、学校が行うべきことは学校が担うシステムを確立する。学校は、自主性・自律性の確立のため、権限と責任を持つとともに、保護者・住民の参画と評価で透明性を高め説明責任を果たすシステムを確立する。」と述べられている。この実現に向けて相互に努力することが涵養である。
   
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