寺崎 私たちが語る以上にやさしく、基本あるいは原点を今日はお話しいただいたという思いでいっぱいでございます。
はじめの話ではありませんが、私たちが昭和20年代から30年代に受けた教育は、ある意味では教育的に言えば問題解決学習が盛んだった時代で、体験が多かったですね。いろいろなものをつくりました。飛行機をつくって飛ばしたり、模型の立体地図をつくったり、金づちやノコギリなどほんとうに手や足を使っていました。
塾長 やりましたね。
寺崎 それから、私なんか、七輪でカレーライスをつくった記憶もありますし、自分の腹巻を編んだとか、そういうのをたくさんやった記憶がありますね。だからか私は、だからある意味では今でも体験学習主義者で、できるだけ体験学習をするようにという話を教師にも話をしているのですが、でも体験というのは教師にとっては手間ひまがかかって、冗談半分に「大変的な学習」というのですが。金はかかるし、手間ひまはかかるし。だけどそれをやらないと、先生がおっしゃったように、子供には感動体験は生まれてこないのです。でき上がった喜びとか、それをみんなでやったときのうれし泣きとか、喜びの笑いとか、そういうものを改めて本日安西先生からご示唆いただいたなというので、勇気がわいてきました。
教師に期待するということでは、本気で子供たちに立ち向かう。私たちのころの先生というのはそういうふうに接してくれたなという印象が残っていて、自分も教師になったときに、そうしなければいけないという思いがありました。
最近、例えば東京など都会の学校では、高齢の教員が多くなっていますので、どうも少し動きが鈍いところがあるのですね。一方で、これから高齢の教員が辞めていく時代に入りまして、これから10年はどんどん新採用教員が増える。この傾向は東京のような大都市が終わると、今度は地方でも同様でありまして、約20年間そういう時代が続く。ですから、子供にそういう情熱のある、使命感のある教育をやっていくためにも、それができる先生を育てていかなければいけない。これからの20年間というのは、まさに教育界にとっては大変な時代ですね。
塾長 そうですね。正念場だと思いますね。
寺崎 そういう意味で、安西先生から原点を大事にするというお話をいただいたので、これをぜひ私たちも大事にしていきたいと、あらためて確認できてよかったなと思っている次第でございます。ありがとうございました。
塾長 こちらもいろいろ教えていただきました。やはり、いまの時代、いったん原点に立ち返って、勇気をもってこちらもやっていきたいと思いますね。
松本 安西先生におかれましては、小学校教育にこれからも温かいご支援とご協力をいただければと思います。
本日は、お忙しいところを本当にありがとうございました。
〔了〕
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てらさき・ちあき 昭和21年東京都練馬区に生まれ、よく遊べ遊べで育った。昭和44年東京学芸大学社会科卒業。練馬区・板橋区の公立小学校に勤務。都教育庁指導部指導主事・主任指導主事・都立教育研修所教科研究部長、練馬区立開進第三小学校長を歴任。現在、同区立光和小学校長。兼務、全国連合小学校長会長、都公立小学校長会長。 |
あんざい・ゆういちろう 昭和21年生まれ。昭和49年慶應義塾大学大学院工学研究科博士課程修了。工学博士。カーネギーメロン大学客員助教授、北海道大学助教授等を経て、昭和63年慶應義塾大学理工学部教授、平成5年理工学部長兼理工学研究科委員長。平成13年慶應義塾長に就任。現在、日本私立大学連盟会長、日本私立大学団体連合会会長、全私学連合代表。 |
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