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【新春対談】21世紀に生きる日本の子供像

慶應義塾創立150周年
 塾長 慶應義塾は1858年の創立ですので、あと2年、2008年に創立150年を迎えます。その慶應義塾の創立150年の記念事業の基本コンセプトが、さきぼど申し上げた「独立して生きる力」と「協力して生きる力」、2つの力をもつ人たちをはぐくむ教育をもう一度慶應義塾が出していこうではないかと、そういうことが基本になっております。
 学校の周年事業というのは、その学校がどうなりたいかということがいわゆるキャッチフレーズになっていることが多いのですね。自分たちの大学はこういう大学になりたい、こういう学校になりたい。いま申し上げた「独立して生きる力」と「協力して生きる力」というのは、これからの社会、これからの教育がそういうふうになってほしいということが基本テーマになっていまして、そういうことを慶應義塾としてはむしろ社会的な使命として実現していきたいということです。
 会長がおっしゃることはごもっともで、教師の力が問われている時代だと思います。それこそ昔は、先生というと、まちを歩いていても、「あっ、先生」と言われて、「ちょっと寄っていきなさいよ」と父母や保護者の方に言われた。最近は、長々とどこかの家庭に寄るとほかの家庭が怒るとか、そういう時代になったようですけれども。そういう意味での、先生と社会とのつながりというのも少しずつ薄くなっているように思うのですね。そういう意味での広い使命感というのは大事だなと思いますね。

 「Can Do Net」(感動ネット)
 塾長 それから、1つ付け加えておきたいのですが、慶應義塾は小学校から大学院の学生までおりまして、「Can Do Net」(感動ネット)というのを始めました。英語で「Can Do」と書いて「かんどう(感動)」と読みます。
 その「Can Do Net」というのは、子供たち、あるいは大学生でも、慶應の児童、生徒、学生が、こういうことをしたいと申し込むと、それに対して、例えば卒業生が対応して実現したり、そういうシステムです。
 例えば、弁護士が1日何をやっているのかよくわからないですね。そこで興味をもっている生徒にしっかりした弁護士さんを紹介して、そして弁護士事務所に1日いて、裁判所にも行って、刑事裁判の見学までやって、というようなことです。他には、アナウンサーというのはどういうことをやっているのかというのもありました。
 よくあると思いますが、例えばアナウンサー、例えば弁護士と、Aコース、Bコースをつくって、クラスでどのコースを取りたいかとやるのが普通だと思います。慶應の「Can Do Net」というのは、子供たちから「やりたい」と言わない限り、こちらはまったく何もしない。そういう一種の自発性を促す場というのでしょうか、そういう意味でやっております。事故等があるといけないので、あまり宣伝はせずに静かにやっているのですが、これからは、子供たち自身、自分から出るような場が大事だなということでやっています。
 寺崎 まさに自己目標設定ですね。それに対応できるシステムがあるというのは、すばらしいことですね。
 塾長 よく「ボランティアのシステムですか?」と、言われてしまうのです。ただ、ボランティアのシステムでよくあるのは、ボランティアの人が決まったコースを提供するものですね。「Can Do Net」では、一切、小学生にも「こういうメニューがあるからやったらどうかな」ということは言わない。そういうことでやっております。
 寺崎 自分が目標を設定して、立てたところからことが始まる。何かがあってくるのではなくて。
 塾長 そうですね。
 先生のほうから「これやったらどうかな」というのは、普段からやられていることで、それ以外のチャンネルをつくりたいなと思いました。

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