小学校教育への期待
松本 安西先生の場合は、一貫教育を進めているというところでお話しいただいているのですが、私たち学校教育の入門期に当たる小学校という立場に対して、発展期にも当たる高等教育に携わる立場から、公教育の小学校段階でこういうところをもっとしっかりということ、あるいは学校教育に対して期待することを……。
塾長 これだけの世界にいろいろな生活をしている人がいて、お互いに支え合っている社会の中で、人間として生まれて、ほんとうに幸せに暮らしていくために、ある常識的な人間性、これは成長の条件だと思うのですが、そこをかなり鍛えないといけないと思いますね。それについては、言葉、体、それから倫理というのでしょうか、そういうことは鍛えないといけないのではないか。一方で、体験とか、目標をもつとか、そういうことについては、ある意味で伸び伸びと自発性を促すようなコミュニティの環境をつくっていかないといけない。その2つをメリハリをもってやっていただければと思うのです。
なかなか現場の先生方は大変だと思いますが、「鍛える」ということと、「自発性を促す」ということの、バランスだと思います。
どうしても、その2つの間で振れますよね。人間というのは頭に2つのことを同時にもちにくい。「今度、鍛えなきゃ」と言うと、ゆとり教育を全部やめて鍛えるのかと、こういうふうに思ってしまうのですね。それが人間のある意味では生物学的な性質だと思うのですけれども、そこをこらえて両方を伸ばしていくことが大事だと思います。
小学校長への期待
松本 いまお話があった「鍛える」「自発性を促す」ですけれども、私たち2万2千余の小学校長は、日々学校経営に努力しております。私たちに対しまして、安西先生より叱咤激励のお言葉、また小学校が期待を担えるようなお話、勇気づけのお話をいただければと思います。
熟長 それぞれの小学校の校長先生、あるいは教頭先生、先生方は、日々それこそいろいろなことに追われて大変だと思いますけれども、やはり、きっと抱いたであろう最初の志、「どうして学校の先生になったのか」ということについては、ぜひずっと持ち続けていただいて、子供たち1人1人が大人になったときに、あの先生に会ってよかったなと思える、そういう人であってもらいたいなと思いますね。そういう人たちをいまの日本はほんとうに必要としていると思います。
当たり前かもしれませんが、あまりにもそういう人たちが少なくなっていると思うので。
小学校へ行くと、先生の机の上に書類が山積みで大変だなと思います。しかしやはり、使命感といいますか、志を忘れずにやっていただけるといいなと思います。
松本 こういうところはもっと力を入れてというのはありますか。
塾長 私は小学校の先生をやったことがないから言えるのかと思うのですけれども、エネルギーは要りますが、本当に温かい気持ちで怒ってもらいたいですね。子供と一体となって。思いやりというのは子供に対しても同じことですから、そういう思いやりをもって、叱るときは叱ってもらいたいなと思います。こういうことはいつもお考えになっていることだと思いますが。
いま、大学の学生で、少し何か言うと、あっと折れてしまう子が増えているのですね。これは小学校の教育というよりは、むしろ大学受験とかそういうことが大きいと思いますが、一番根っこになるところで、小学校時代にどういう環境で育ったかというのはとても大きい。どう考えても、小・中・高・大の先生方の中で最も影響力が大きいのは小学校の先生だと思いますので、ぜひ温かく子供と一体になって叱っていただきたいなと思います。
松本 寺崎会長には、全国連合小学校長会長として、いま安西先生にいただきました2万2千余の小学校長への期待を受けてのお考え、また本日のお礼も含めてお願いいたします。
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