ところが、これからの国際社会というのは、アジア諸国、中東、あるいは、ロシア、ヨーロッパ、アメリカ、どこをとっても、どういう国がどういう関係になっていくのか、毎日、新聞に載っていることが違うような、そういう時代になりました。我々が小・中・高・大学のころとは非常に違う時代になりました。
国内においても、これからは子供の数が少なくなり、高齢者が多くなってきて、そうすると、年金問題にしても何にしても、世代間のギャップというのがどうしても顕在化してきます。子供の数が少なくなってくるということは、女性の社会での活動も、いや応なくいろいろなことで出てくると思います。
そういう意味で、国内においても多様な人たちが多様な場で活動する。若い人たちも、齢とった人たちも、いろいろな活動をするようになる。国際的にも、いろいろな国、いろいろな民族同士が、いろいろな立場で関係をもつようになります。国際的にも国内でもきわめて多様で、しかも利害が相反するような関係が、昭和21年生まれの人たちのころよりはずっと多くなってくる。
このような、非常に複雑で多様性のある時代を生きる子供たちに必要なことは、軋轢のある人たちの間で、人の気持ちを理解し、思いやりをもって、ただし、卑下するのではなく、独立自尊の精神をもって、利害得失を超えて協力し合って生きていくことの大切さを学ぶということが一番大事だと思います。よく考えていくと、そこへ到達するのですね。
皆さんよく「人間力」とか「21世紀に生きる」とか言うのだけれども、では21世紀とはどういう時代なのかということについて、はっきりおっしゃる方って、そんなにおられないのです。
いま縷々申し上げましたけれども、そういう時代になるとそうすると、「協力して生きる」ということが最も大事になってくる。例えばお隣の韓国や中国といろいろなことがありますよね。あるいは東南アジア諸国とも、きっと今後いろいろなことが……。いまの子供たち、小学生だったら、20年後、30年後にそういうところで生きるわけです。20年後、30年後のアジアの世界では、いろいろな軋轢もあるけれども、それを超えて、人の気持ちもわかり、自分のこともちゃんと主張して、一緒にやっていく、そのための力を養うことが大事だと思います。
寺崎 学校で子供たちに付けなければいけない力は、まさにそのことだろうと思っております。
先ほどもキャラクターが豊かになったという話を申し上げたのですが、実はそれは、子供たちのそれぞれの違いいが出てきている。ところが、違いは発揮できるのだけれれども、違いが集まってきたときに、それをどううまく調整していくのか、どういう方向で行くのか、そこがうまくできなくて、もめごとになったり、そのまま分かれてしまったり、そういうことがいまの学校で多いのですね。
家庭でも、個性を出すことは大事にしているのだけれども、個性を出せば絶対に他の個性とぶつかる。ぶつかったものをどう調整するかということは、実はお父さん、お母さんは子供たちに教えられない。となると、私たち学校がそういう力を教えていかなければならない。例えば「Aというのはこういう考え、Bというのはこういう考え、これは当然違うんだけれども、じゃ、どうする?」、そこでお互いに調整するような、時間はかかるのですが、そういう体験をこれからたくさん積ませなければいけないなと思います。
塾長 まったくおっしゃるとおりだと思います。特に社会科というのは、そういう点でとても大事だと思います。小学校だけではなくて、大学まで非常に大事だと思っています。
例えば大学ですと、外国の学生とかなり激烈なディスカッションをやって、それでもお互いの利益と相反するような意見を超えて、一緒に新しいことをつくっていく体験が非常に大事です。実はそのための教養というのが非常に大事で、それにはやはり学問が大事だということになってきます。かなりわかりやすくなるのですね。
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