ることができるなどの「豊かな心」を持って自分自身を見つめ,他者とかかわり,集団や社会或は自然や崇高なものとかかわることである。「豊かな心」は,道徳の授業,学校生活全体の教育活動を通して,さらには体験的学習等々それらの総体の結果として形成される。
しかし,「豊かな心」をより確かなものにするためには,他者理解の深化のための支援が必要である。そのため,理念だけではなく,多様な人々(障害のある人や高齢者等を含む)との普段からの多くの直接的な触れ合い,交流や共生を通して得られる他者への共感的理解が欠かせない。
(2) 障害のある人や高齢者について
障害のある人や高齢者は「弱い保護すべき存在」と考えると,「救済してあげる」という優位に立つ者と「保護してもらう」という弱者との上下関係が生じやすくなる。それは,障害のある人や高齢者の自立の妨げにもなる。そこで,それらの人々との触れ合う体験を多く重ねさせることにより,お互いに尊重しあう対等な人間関係を築かせることが必要である。
なお,人の一生は「障害」と背中合わせであり,高齢も避けることはできない事実であり,決して他者の状況ではないことを多くの体験の中から気付かせることが必要である。
(3) 交流教育について
交流教育は,障害のある子供の経験を広め,社会性や好ましい人間関係を育てる上で,有意義である。また,交流教育は障害のない子供たちにとっても意義深い教育活動である。即ち,交流教育は,自分たちと障害のある子供たちの中に多くの共通点を見出して,仲間意識をはぐくんだり,障害のある子供たちが自らの障害を克服する意欲に触れて,自分の生活の姿勢や学習の態度を反省したりするよい機会となる。また,障害のある子供たちはもとより,幼児や高齢者を含めて,自分たちの地域社会を構成しているすべての人々に対して,思いやりの気持ちを育てる活動の場とも考えられる。
(4) 共生について
基本的に人間は多様であり,個の集合が社会である。従って,「障害のある人」も「ない人」も「共に生きよう」という考え方が必要である。
そのためには,多様な体験活動や多様な人間との触れ合いを経験させることが必要であるが,それは概念的理解や儀礼的行動に留まる傾向もみられる。そこで,一緒の生活をできるだけ多くすることを通し共感的理解にまで深化させる必要がある。
(5) 知・徳・体について
「豊かな心」を持つ児童を育成するためには,道徳教育の重点化を図ると共に,知・徳・体がバランスよく統合された児童の育成が求められる。従って,学校教育全体を通し,知・徳・体のバランスが取れた教育課程の編成を図ると共に生徒指導等の充実も図り, |
児童が安心して喜んで学校生活を送れるような学校づくりが求められる。そのような安定した学校生活を積み重ねることにより,時間をかけて子供たちに「豊かな心」が醸成されるものと考える。
(6) 校長の指導性について
学校経営において,校長が確たる信念・教育観を持って当たるのは当然である。そして,子供のために必要なことを実施する時には,外部評価を取り入れたり,学校評議員の考えや子供,保護者,地域のニーズ等を踏まえたりしながら,更に教職員の考えや実態も踏まえた上で総合的に判断するように努めながら,強いリーダーシップを発揮することが必要である。 |